掛け売りと与信は、なぜ消えないのか
BtoBの決済は前払いにもカードにもならず、いまだに「月末締め翌月末払い」が主流です。掛け売りが構造として生き残る理由を、資金繰りと信用の観点から整理します。
BtoCの決済はこの15年で様変わりしました。ところがBtoBは、いまも「掛け売り・月末締め翌月末払い」が主流のままです。遅れているのでしょうか。私はそうは思いません。
掛け売りは「決済」ではなく「金融」
小売店が商品を仕入れて、売れて、現金になるまでには時間がかかります。仕入れの支払いが翌月末なら、その間に商品を売って支払いに充てられる。掛け売りは、買い手の資金繰りに合わせて支払いを遅らせる短期融資として機能しています。
前払いやカード決済への置き換えが進まないのは、この金融機能を誰かが肩代わりしない限り、買い手の資金繰りが即座に苦しくなるからです。
与信は審査ではなく、積み上がる関係
「この会社にいくらまで掛けで売ってよいか」という与信判断は、財務諸表だけでは決まりません。
「あそこは支払いが一度も遅れたことがない。だから多少の無理は聞く」
現場の与信はこういう積み上げでできています。10年分の支払い実績は、決算書に載らない信用情報です。取引をデジタル化するとき、この関係として蓄積された与信をどう引き継ぐかが、実は最大の設計課題になります。
新しいプレイヤーは何を置き換えているか
近年増えたBtoB後払い決済や請求代行のサービスをよく見ると、置き換えているのは決済処理ではなく与信リスクです。「売り手に代わって未回収リスクを引き受ける」ことが本体で、決済はその表皮にすぎません。
つまり掛け売りの構造は消えていない。与信の担い手が、売り手個社から専門事業者へ移りつつある、というのが正確な見立てです。
消えないものを前提に設計する
掛け売りと与信は、企業間の信用が資金繰りを支えるという構造の表れです。ツールが変わっても構造は残ります。デジタル化を考えるなら、この構造を消そうとするのではなく、構造の上に乗る設計をするほうが早い。20年現場を見てきた私の結論です。